みなさんこんにちは、東京慈恵会医科大学泌尿器科の鈴木です。
夜間頻尿という言葉をきいたことはありますか?
本日は多くの方が悩んでいるのにあまり問題視されていない夜間頻尿についてお話します。
夜間頻尿
夜間頻尿とは、夜眠りについたあと排尿のために1回以上起きなければならないという悩みがあり、そのことで日常生活に支障をきたしている状態をいいます。健全な日常生活を営む上で、十分な睡眠をとることは大事なことです。
年齢・性別の有症状率
夜間頻尿は歳をとるにしたがい増加し、そして夜間の排尿回数も増え著しく生活の質を低下させます。夜間頻尿は前立腺肥大症が原因の男性の病気だと思っていらっしゃる方が多いようですが、女性の患者さんも多く、男女差はほとんどありません。
夜間頻尿は、慢性的な睡眠不足を引き起こします。
そのため、日中の眠気で日常生活に多大な支障をきたします。
また、単におしっこで夜起きてしまうばかりではなく暗い中トイレに行く回数が増えることは、転倒による怪我や骨折の危険が増えます。
これらは寝たきりの原因になることもあります。
夜間頻尿の原因
夜間頻尿の原因はいろいろありますが、主な原因は夜間多尿と機能的膀胱容量の減少、そして睡眠障害に分けられます。いずれも年齢とともに悪化します。
夜間多尿の原因
まず、夜間多尿についてお話します。夜間多尿とは夜間の尿量の多い状態をいいます。本来、尿は日中に多く作られますが、年をとるに従って、心臓や腎臓の働きが低下すると、夜間に尿量が多くなってしまいます。そのため夜間多尿となります。また、高齢になるに従い夜間の尿量を減らす抗利尿ホルモンが十分に分泌されなかったり、効力を発揮できなかったりするようになるのも原因のひとつです。さらに、夜間多尿は過剰な水分摂取とも関係します。水分は飲料だけではなく、食物にも多く含まれています。自分で思っている以上に過剰に水分が体に蓄積されているかもしれません。また、高血圧や心臓病などのお薬の影響で夜間多尿になる場合もあります。
機能的膀胱容量の低下とは、前立腺肥大症、神経因性膀胱、過活動膀胱、間質性膀胱炎などの病気が原因で、膀胱に尿をためておけなくなり、1回の尿量が減る状態をいいます。
夜間頻尿の原因
睡眠障害も夜間頻尿の原因になります。特に高齢者は眠りが浅く、ちょっとしたことで目を覚ましてしまいます。本人もトイレに行きたくて起きるのか、目が覚めるからトイレに行くのか、わからないということも多いようです。
睡眠障害にはうつ病や不眠症などの精神的な病気以外に、睡眠時無呼吸症候群や、むずむず足症候群等の多くの病気が関連している可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群:睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる病気
むずむず足症候群:脚を中心に強いかゆみや痛みなど虫が這うような不快感が起こり、じっとしていられなくなる病気
排尿日誌
夜間頻尿に悩んでいるが、水分の過剰摂取が原因なのか、それとも何かの病気なのかどうかわからないという方は排尿日誌をつけてみるとよいでしょう。
排尿日誌には1回ごとの排尿時刻と排尿量を起床から翌日の起床前まで記載して1日分とします。
これに就寝時刻、飲水量や時刻その種類なども記載するとより正確になります。
排尿日誌をつけることで、水分摂取量と排尿量からご自分の排尿の状況がわかります。
質問票
病院の診察時に自分のおしっこの問題を客観的に伝えられるように使用する質問票をつけてみるのもおすすめです。
質問票には、様々な頻尿の原因により排尿の障害全般を点数化して評価する国際前立腺症状スコアや過活動膀胱の症状を評価する過活動膀胱症状質問票、夜間頻尿による生活の質の影響をみる夜間頻尿QOL質問票などがあります。
本サイトにもそれらが掲載されていますので、ご自身でまずはチェックしてみてください。



夜間頻尿の治療は、原因により対処が異り、原因ごとの適切な治療が必要です。
まず原因を知ることが重要となり、治療・改善できるものから治していくのが現実的で、その原因究明のためには、先ほど紹介した排尿日誌がとても役立ちます。
夜間頻尿の治療
たとえば夜間頻尿の主原因が過剰な水分摂取であれば、水分摂取に関する指導を行います。
血圧が高い場合は高血圧症の治療を、膀胱容量の低下が原因の場合は、その原因となる病気を見極め、その治療に必要な薬物による療法を行います。
睡眠障害対処12の指針
睡眠障害が原因の場合は、不眠の原因となっている基礎疾患をまず治療し、生活習慣の改善を行ってもらいます。
厚生労働省から睡眠障害対処12の指針がでていますので、参考にしてみてもよいかもしれません。
依存の危険もありますので安易に睡眠薬に頼るのはあまり好ましくないと思います。




夜間頻尿は、根底に加齢があり、さらに原因が複雑なため、改善しにくい方もいらっしゃいます。
しかし、最近は効果が認められているお薬もありますので、是非、お近くの薬局や専門医にて相談してみるとよいでしょう。
※先生のご所属・肩書き・内容は掲載当時(2010年)のものです。